コメント

映画にとって一番大事なのは、表現せずにはいられない、
どうしてもこれが撮りたい、という監督の強い思いだ。
この映画には、それがある。いい映画だと思う。

周防正行(映画監督)

てんこ盛りの理不尽な人生に男はどう向き合うのか?逃げるのか?闘うのか?
観る者は主人公の葛藤に自らの人生を重ね、そのうねりへの伴走を余儀なくされる。
そして映画が終わった後も、まだ揺れている自分に気付く。

高橋伴明(映画監督)

映画『月の下まで』と、この映画を初監督した奥村盛人監督にあるのは、強烈な郷愁と、逃れがたい現実との、対峙だと思います。それが、親潮と黒潮の流れのようにぶつかりあって、静かな怒りの混乱水域から、映画の顔が声が現れます。
土佐のカツオ漁の港町に住む人たち。演じる全ての俳優に寄り添う、ささやかな明るさと陰影。その声を顔を、自分も真似てみたくなる映画でした。
男は、漁への格闘へ船を。それは郷愁への逃走にも見えます。
では、月の下まで再度船を出す時、それは、凪いだ海の一抹の夢でしょうか。小さくても確かな希望なのでしょうか。
そのことがどちらにもとれて、泣いてしまいました。
主人公の土佐の男を演じた、那波隆史さんが素晴らしかったです。

鈴木卓爾(映画監督・俳優)

その監督が“どうしても撮らなくてはならなかった映画”が僕は好きです。
家族とは何か?『月の下まで』には、奥村監督の切実が映っていました。
家族という舟を降りてしまった母・・・残された父と息子を繋げているのは痛みと優しさなのだと思う。
無骨な父の、息子を思う優しさと家族であろうとする意地が、苦しくて愛おしい。
舟に乗った二人はどこへ向かうのか?
舟を降りないで欲しい、どんな辛いことがあっても一緒に舟を漕いで漕いで漕ぎ続けて欲しい、だってそれを出来るのが家族だから・・・。

中野量太(映画『チチを撮りに』監督)

人は皆、身勝手で、意外なほどに強く、弱っちい生き物である。
そんな人々の想いが土佐の土や潮と絡み合って、強烈な匂いを放つ映画だった。
奥村監督は、容赦ない空間に我々を突き放し、試してくる。
それでも生きていく力がお前たちにあるのかと。
その愛と執念と誠実さが、痛いほど突き刺さる。

舟をこいで、こいで、こぎまくって、我々はどこに辿りつくのだろう。
『月の下まで』いけたと思ったら、実はもとの場所に戻っているのではないか。
誰かが、猛烈に恋しくなった。

杉野希妃(女優、プロデューサー)

主演の男優の方の演技が大変素晴らしかったです。父親と障害を抱えた息子の情愛が繊細に描かれていると思いました。
また、俳優、スタッフの皆様が黒潮町に民泊しながら撮影されたとのことで、高知県の自然と土佐人の力強さを非常にリアルに表現されていると感じましたし、特に最後の盛り上がりは感動的でした。  
多くの皆様に是非、見ていただきたい作品です。

尾﨑正直・高知県知事

暗黒の世界から明るくなると小さな島が映し出され、太く力強い文字で那波隆史の名前がクレジットされる。この映画を背負うに相応しい名前だ。
那波は私が主宰する“STRAYDOG”の初期メンバーで、ある時期まで私の新作には必ず出演していた。一度は劇団から離れたのだが、一回り大きくなって戻ってきた。物語を背負える役者になった。高知の寒い海に臙脂(えんじ)色(いろ)のダウンジャケットがよく似合っていた。夜の埠頭(ふとう)で、美しい少女が主人公の息子を膝枕してハミングしている。外灯の明かりが海にたゆたう。そんな美しい場面や、「月の下には夢の島がある」というセリフが、まるで寒い心にダウンジャケットをかけるが如く温めてくれる。
私はこの映画の未来に、「夢の島」を見た。

森岡利行(映画『上京ものがたり』監督、脚本家)

黒潮町の自然の中で力強く生きる父親と息子の姿に胸が熱くなりました。スタッフの方々が黒潮町内に滞在して撮影された映画で、町民も多数エキストラで参加しており、私たちにとっても非常に思い出深い作品です。カツオの町・黒潮町ならではの豪快な土佐人気質や、地域の人々のつながりの強さも鮮明に描かれています。ぜひご覧ください。

大西勝也・高知県黒潮町長

新聞記者という職を捨て、映画監督を目指すという暴挙に出た奥村君とは、映画学校の実習で出会った。「これを撮りたいんです」と彼が見せてくれた脚本は、およそ自主映画の規模を超えた堂々たるもので、果たして実現できるのかどうか、私は不安を感じた。しかし彼は、あれよあれよという間にその作品を完成させ、ついには劇場公開までも実現させたのだった。その行動力には畏敬の念を覚える。名優・那波隆史さんがとてもいいです。

西村晋也(映画監督・脚本)

まさしく高知映画。
奥村監督が描く漁師町と家族の物語は単なる故郷賛歌に終わらない生々しい現実をも示している。
映画の中に高知の男を象徴する酒とカツオの豪快さがあり、そしてそれと同じ位のやせ我慢や情けなさが同時に存在するのが切ない。

デハラユキノリ(フィギュアイラストレーター)

エリ役の富田理生が魅力的。隔絶された孤独な空間。地球の果てを感じさせる演出が群を抜いている。

西村雄一郎(映画評論家)

この世の厳しい現実を目の当たりにし
憤りや哀しみ 様々な感情が込み上げてきました。
本能でぶつかり 温もりを求めているだけなのに
それを問題にされてしまう現実。

人生の問題集が 脳を駆け巡る。

生きていく中で 様々な事が起ころうとも
最後にぐっと胸を突き動かしたのが
清らかな心と 純粋でまっすぐな愛

月の下に行こうとも
そこは 夢の島
愛の島であって欲しい。

木内晶子(女優)

出航――この言葉から我々が想像することはなんだろう? ここから旅立つことへの期待か? それとも言い知れぬ不安か? この場所から去ることへの一抹の寂しさか? それともこれから向かうまだ見ぬ新天地を夢見る希望か?  ラスト、紆余曲折を経て、父と息子が迎える「出航」に思いを馳せたとき、こう心の中で呟いた“二人に幸あれ”と。

水上賢治(映画ライター)

離婚、知的障害の息子、認知症の老母…かろうじて成り立っていた暮らしが崩れていく。人生はままならない。月に向かって進むのか、奈落の底に落ちていくのか。大海原を漂う舟のようだ。それでもきっと一筋の光が見えてくる。そんなかすかな希望を感じさせてくれる作品だ。

津島令子(映画パーソナリティ)

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